葉月のスキズキ

アクセスカウンタ

zoom RSS 花あれば

<<   作成日時 : 2009/04/06 12:17   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2

今年は桜が咲き始めてから寒い日が続いたので、比較的ながく桜を楽しめた。

桜といっても要するに染井吉野のことを言っているわけだが。

市ヶ谷の土手で夜桜見物もした。私にしては珍しいことである。
座ったままでも人が酒を運んで来てくれるのでただただ桜ばかり眺めて杯を重ねる。
なんか桜って俳句に似ていると思った。
花を見ながら俳句のことを思い出すなんて無粋な話だが思い出してしまったものは仕方がない。

花あれば西行の日とおもふべし  角川源義

ババロア句会でユースケくんが花の有名句の一例として挙げた角川一代目の作である。
当然、以下の西行の有名な歌を念頭において詠まれたことはまちがいない。

ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃  西行

私でさえ知っているような有名な歌。
実際西行は如月十六日に亡くなったそうだから、伝説化するのも無理からぬ話だ(きちんと調べて出典を明示したりしないあたり『葉月のスキズキ』である、私は学者でもきちんとした俳人でもないので)。

西行というのは人気のある人で、確か芭蕉も中世の歌人の筆頭に挙げていなかっただろうか(きちんと調べて出典を明示したりしないあたり『葉月のスキズキ』である)。
出家した身のくせに恋の歌が多いあたり現代でも受けそうな気がする。

ところで西行のいうこの花はもちろん現代私たちのもっとも目にしやすい染井吉野ではない。おそらくは山桜か。

染井吉野の起源には諸説があるが、定説としては明治五年前後に東京染井(今の駒込辺り)の植木屋さんが大島桜と江戸彼岸を掛け合わせてつくり出したとのこと。
根付きもよく成長も早いので明治期あっと言う間に各地に広がったそうだ。現在の占有率は80%超。まさに人工的な状況である。ご存知のように咲いたと思ったら瞬く間に散り始める。いっせいに咲くのはクローンだからだ。やっぱりモダンな印象は拭えない。どうしたって明治以降の日本の狂ったような経済成長と重ね合わせてしまう。
そんなわけで桜(染井吉野)は俳句に似ているなという気がしてしまったわけだ。

所詮、座の文芸、俳諧連句のようにその場で楽しければいいじゃないかというような軟弱な(?)態度を良しとしない俳人が明治期の日本には何人もいたようだ。その場かぎりではない芸術性、作品性が日本の短形詩にも是非欲しいと願ってやまない青年たち。西洋かぶれと言ってもいいのだが国をあげて西洋かぶれだったのだから仕方が無い。とはいうものの急激な経済成長、富国強兵を旨とした国策との親和性がどうしても感じられる。たかが十七音の短いものに作品性と求めようという性急さは、なにはともあれモダンタイムスである。

二十世紀はナショナリズムと戦争の世紀だったわけだけど、そういう観点では明治というのは幻想的な国家の青年期の只中にあったとも言える。
よく坂本龍馬は美化されすぎているなんて意見を聞かされたりすることがあるが、それを言い出せば、明治維新の美化は異常事態と言ってもいいようなものである。
十九世紀当時、非欧州地域でよく行われていた、列強がその地域の内戦に乗じて植民地や半植民地にしてしまう政策を、その中でも最も得意だった英国が日本に対して行い半植民地化を成功させただけのことである。尊皇攘夷を旗印に倒幕を遂行した果てに題目とはまるで違う親英国的な政権が生まれ西洋かぶれに走り出したのは隠しようもないの事実なのに、よくもあれほどの美化が歴史の本などでまかり通るものだ。
もっとも単純に英国の半植民地と呼ぶのは難しい複雑な動きが明治期の日本にあったことも無視できないのだが。

降る雪や明治は遠くなりにけり  中村草田男

何かで読んだのだが、草田男がある宴席で色紙を頼まれ、三十年以上前に作ったこの句を色紙に書いたら「流行り言葉をうまいこと俳句に読み込みはりましたなあ」と隣にいた芸者さんに誉められたというエピソードは好きだ(きちんと調べて出典を明示したりしないあたり『葉月のスキズキ』である)。

ソビエトが崩壊し、少し遅れてアメリカが崩壊する。

平等に分配すれば世界の人口の倍以上賄える第一次産業の生産力を誇りながら、人類の歴史上未曽有の難民と餓死者を生み出した二十世紀が終わり十年近くが過ぎようとしている。私の息子たちが生き、(もしかしたら)生まれてくる孫たちが生きる時代も、やはり恐怖と貧困に支配されたものになるのだろうか。
百年しかもたないと言われ続けながら意外としぶとい染井吉野を眺めて、これからの百年を思う。

(脈絡なく文章を並べたてるのはけっこう集中力が必要なんですよ、本当に)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
まるでハイクブログのようですね。
ゐこま
2009/04/08 01:23
ゐこまくん、いらっしゃいませ

二十四節気に合わせてこの調子で推移すれば、りっぱにハイクブログに見えるかもしれませんが『葉月のスキズキ』ではこの手のものは年に一度ぐらいでしょう。
葉月
2009/04/08 09:21

コメントする help

ニックネーム
本 文
花あれば 葉月のスキズキ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる