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もう間もなく住居を処分して立ち退かなければならないことがわかっているのに、ステレオのスピーカを買い換えたのが十二月のこと。ペアで標準価格14万円くらいのものの中古品が外装に壊疽があるため3万円くらいで売っていたので購入した。 それ以来、部屋を片付けたりスピーカの位置を変えたりしながら、ちょっと熱心にCDやLPを聞きながら数ヶ月すごすことになった。どうしてそんなことになったのか自分でもよくわからない。 聴いていると時々LPでもかなり音の良いものがあるのに気づく。あまり本気にしていなかったが確かにLP(アナログレコード)には音が良いものも多いようだ。LPがそんなにない私の所ですらCDより豊かに響くように感じられるLPが何枚かある。好きで良いものを選んでいた人のところにはたくさんあることだろう。 CDが出始めた80年代半ば、オーディオマニアのCDへの攻撃はすごいものだった。実際メーカー側は普及を急ぐあまり廉価で低性能なハードウエア(CDプレーヤ)を連発していてノウハウの蓄積もない状態、メディア(ディスク)もバカ高い割にはLP用のマスターテープをリマスターしないでそのままCDにしたようなものもあり音質的に誉められないものも多かった。文字通りキンキンしているようなものすらあった。 しかしユーザインターフェイスの簡便さとSN比は歴然とCDの方が優位で、LPが早晩消え去るのは誰の目にも明らかだったので、どうしたって今まで苦労して集めたLPがゴミ同然の扱いを受ける運命にあるオーディオマニアたちの僻みにしか見えなかったものだ。 当然私も当時、規格から推してCDより音のよいLPは若干あるだろうけど、100万円以上のオーディオシステムを持っているような好事家にしか違いが気にならないようなものだろうと高を括っていた。 現在私の手元にあるオーディオシステムは総計35万円程度のものだ(しかも中古で買ったりタダで手に入れたりしたものばかりなので実際に使った金額は10万ちょっと)。この程度のシステムでも良い音で鳴るLPがある。 最近中古レコードは200から600円ぐらいで売っていることが多い。200円と言えば缶コーヒーと大して変わらない。LPにはジャケットだけでも200円出してもかまわないようなものだってある。ああいうのが気になってしょうがない昨今。現在の住居を処分したら今後どこに住むかも決まっていないのに。 長年ミュンヘンフィルを振っていたチェリビダッケが録音は音楽の殺戮だと見なしてレコーディングをひどく嫌っていたのは有名だ。正論である。音楽が生き物ならレコードは死体だと言える。でも死体なら死体なりの楽しみ方もあると思う(危ない発言?)。 何百万円も投じて高級なコンポーネントとリスニングルームを整備するくらいなら、その金額で何百回も一流の演奏会に足を運ぶことは出来る。オーディオに凝るなんて一見バカな話。 しかし百万もするアンプは見た目ほどバカな買い物ではないような気がする。きちんとしたメーカーのものだったら20年くらい使用できる。ざっと7000日。数時間の楽しみとは言え、一日当り140円程度だ。いくらそれが死体だからって極上の死体なら140円は安い。 とは言うものの、いずれにしても住む所がなきゃなあ。 |
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